そこに酒があるから・・・

出先から帰ろうとしたある日の夜。

愛バイク『ハイスタSP』にまたがりkeyを回した時、ある事に気がついた…いや、思い出したと言った方が正しいか。

ガソリンがヤバいのだ。

それも、ガソリンメーターのレッドゾーンの半分以下。

自宅までは約15キロ。

燃費の計算上微妙な数値…

帰りがけにスタンドはあるのだが、俺の中のドＳ心に火がついた。

（自宅近くのスタンドまで乗りきってやる）

そう思うと同時に走り出した。

地球に優しい運転、すなわち燃費のいい走り、ナウい言葉で言えば『エコドライブ』で。

急発進はもちろん、加速も控えめ。
50ccスクーターに煽られたって平常心を崩さなかった。

山場は10キロ付近の大橋か。
橋の真ん中でガス欠は色々面倒だからな。

エコドライブもあってか、順調に進み遂に大橋へ流れこむ。

慎重に進む俺は、この時はまだ、自分が"眠れる獅子"だった事に気がついていなかった。

橋を渡りきった瞬間、

「Now is ターイムっ！」

勇猛果敢な男の叫びが胸の中で響く！

残り３キロ。俺はアクセルをヒネり上げる。

法定速度いっぱいで走る俺。
この時のエキゾースト音は、ハイスタSPの歓喜の声にも聞こえた。

ガソスタが俺をいざなうかのように、前方を走る車が次々と車線変更していき、信号もつながりよく青へと変わっていく。

ガソスタが見えたっ！

喜びも束の間、手前の信号で止まると同時にガス欠によるエンスト。

俺は約100メートル先のガソスタまで押して歩く事を余儀なくされた。